父母が共同して子を見守り育てる「親権の分属」

夫婦間に子がある場合、子の親権者を決定することは離婚の条件となります。

日本では、現行法上離婚後の父母による共同親権は認められていないため、必ず父(元夫)又は母(元妻)のどちらかが単独親権者になります。

離婚の際の子の親権を巡る争いは、時に非常に峻烈になります。

妻が子を連れて別居に踏み切った結果、夫からは、夫婦関係等調整調停のほか、子の引渡し審判、審判前の保全処分(引渡し仮処分)、監護者指定の審判申立てなど様々な対抗措置がとられることがあり、子を巡る争いは益々深化していきます。また、離婚後の面会交流については、不履行の際の間接強制(金銭的なプレッシャー)が一応あり得るとはいえ、どうしても親権者(妻側)の任意の協力が必要です。

 子を巡る争いの一つの解決方法としては、現在議論が進んでいる共同親権を導入することが考えられます。ただ、共同親権制度は検討すべき課題も多く、導入されるとしてもまだまだ先の話でしょう。

 そこで、親権と監護権の分属(いわゆる「親権の分属」)が考えられます。これは、実際に子を監護養育する者と、親権者とを分けるものです。

監護権者の権利として、①監護・教育、②居住指定、③懲戒、④職業許可等があります。

 他方、親権者の権利として、①子の財産管理代理、②身分上の重要行為の代理などがあります。例えば、離婚後の子の戸籍の移動(氏の変更)については親権者が行うことになります。分属により、父母が共同して子を見守り育てていく共同親権制度に近い形を実現することが可能です。

 裁判所による判決及び審判で親権の分属が出ることは難しいですが、任意の合意により行うことができますので、一つの方法として検討しても良いと思います。

 

 

 

この記事を書いた人 弁護士 大澤美穂子

2005 年 10 月弁護士登録(第二東京弁護士会所属)、クラース東京法律事務所代表弁護士。
企業法務、一般民事、離婚などの家事事件、高齢者問題(成年後見、遺言、相続)など広く取り扱い、クライアントのニーズに合った最適な解決方法を目指している。

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