事業承継・M&A

1.提供サービス

  • 親族内承継方法のご相談
  • 従業員等の親族外承継方法のご相談
  • 社外への株式又は事業譲渡(M&A)のご相談
  • M&Aの際の法務デューデリジェンス(法務DD)のご相談

2.株式譲渡による事業承継

2-1 十分な準備期間が必要です

後継者の育成期間を含めると,事業承継の準備には概ね数年~10年程度を要すると考えてください。現在の経営者の引退時期を仮に70歳と考えると,60歳頃には事業承継に向けた検討を始める必要がありますね。
「まだまだ大丈夫」と思っていても,10年程度はあっという間です。少しずつでもよいので,早めのご検討をお願いします。
後継者側からみると,40代前後で事業を引き継いだ方はちょうど良い時期だったと考える方が多いですが,50代以降ですと,もっと早く引き継いだ方が良かったと感じる方が多いようです(2017年東商アンケートより)。

2-2 認知症リスクの対策

2022年の認知症及び軽度認知障害の有病率は、65歳以上の高齢者3603万人中約1000万人と約28%に上ります(令和5年度老人保健事業推進費等補助金「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」より)。
認知症で判断能力が落ち後見相当状態になった場合は,自身の財産を譲渡する契約脳威力がないと判断され、株式譲渡が難しくなります。
仮に後見人が就いたとしても,後見人が必ず事業譲渡に協力できるかは未知数です。むしろ、後見人が積極的に株式譲渡契約を締結することは例外と思われますので、オーナー経営者は早めに対策ととるべきでしょう。

2-3 事業承継の方法

①親族内承継

まずはご親族(子や兄弟姉妹など)に候補者がいるか検討します。
親族内承継の場合,何より関係者から心情的にも受け入れられやすく,相続等の制度により財産移転ができますので,所有と経営の分離を回避しやすいことがメリットです。また,次世代の経営者教育などを早期に行うことができます。
但し、他に法定相続人がいる場合には、遺留分等に配慮した相続対策が必要となりますが、専門家の援助によりある程度はリスクを回避することが可能です。

②親族外承継(従業員等)

ご親族に後継者候補がいない場合には、役員や従業員など、会社内から候補者を探すことになります。特に会社内で長く勤務されている方については円滑な承継が望めます。
相続等の制度は利用できませんので、財産や株式移転のために資金が必要になる場合があります。また、個人債務の保証引継ぎ等の対策も必要になります。

③社外承継(第三者)

親族内外に承継が難しい場合には、社外への引継ぎを検討します。方法としては、株式譲渡又は事業譲渡を検討することが多いでしょう。広く候補者を外部に求めることができますので、廃業を避けて従業員の雇用や取引先との関係を維持することができます。事業譲渡代金の一部で負債を消滅させ、その後の生活の原資とすることも可能です。
もっとも、譲渡先を探すためにはある程度の時間がかかりますし、譲渡代金等の条件面を詰める必要があります。

2-4 M&A契約のリスクチェック

規模の大小に関わらず、最近は事業譲渡や株式譲渡が活発にされるようになりました。経済活性化のためには望ましいことですが、会社や事業を売り買いする場合は、そのリスクを十分理解した上で行ってください。売買した後に、予想外の事態に陥りこんなはずではなかったと後悔しても始まりません。M&Aを検討される場合には、規模が小さくても必ず弁護士による契約書チェックをお勧めします。

2-5 経営者の保証債務その他債務の取り扱い

中小企業が金融機関から借り入れをする際は概ね経営者の連帯保証等が入っています。これを解消できるか,また,後継者に承継しなければならないのかについては,経営者保証に関するガイドライン等がありますので,専門家と相談しながら金融機関と調整する必要があります。
また,会社からの借り入れ,住宅ローン等についても整理が必要な場合もあります。

2-6 法務デューデリジェンス(法務DD)

一定規模以上のM&Aの場合、最終合意前に買い手企業側が対象企業の財務及び法務リスクを調査するため、デューデリジェンス(DD)を行います。
法務DDは、以下のような法務リスクを検証するプロセスとなります(目的や期間によりスコープを定めて行います)。

  • 会社組織…定款、社内規則、株主総会・取締役会決議の適法性、子会社取引等
  • 株式…株主名簿記載事項、株主変遷、持株会有無
  • 重要な契約…契約全体像、チェンジオブコントロール条項、協業避止等
  • 資産…不動産、動産、債権、出資持分、保険、知的財産
  • 負債…借入債務、保証債務、簿外債務、偶発債務
  • 人事・労務…従業員の構成、各種規程、労働時間管理、未払賃金有無、ハラスメント等
  • 訴訟・紛争…係属又は過去の訴訟有無、クレーム等
  • 許認可…業法規制の有無及び内容、許認可承継の可否
  • コンプライアンス…各種法令遵守(個人情報保護法・下請法等)、反社関係
  • 環境問題…産廃、有害物質の適正処理、大気汚染、土壌汚染等

当事務所では、法務デューデリジェンスのご依頼も承っております(規模により当事務所と連携して複数事務所で対応することがありますので、適宜ご相談ください)。

3.実際の活用例(一部)

3-1 飲食店経営会社(事業承継)

経営する一店舗(飲食店)を店舗に勤務する従業員に売却したいとのご相談。
従業員の意識も高く、資金的にも問題はありませんでしたが、事業譲渡契約書案をチェックしたところ、契約不適合責任、競業避止義務、損害賠償額の上限規定等の条項内に、依頼者に不利益な条項が散見されたため、修正又はそれが受け入れられなかったときの妥協案をご提案。相手方と何度かやり取りを重ねた後、納得できる契約内容で合意できました。

事業譲渡契約書案は、買主側から提案されたものであり、売主側にとって看過し難い不利益な条項が多くありました。これらを一つずつ検討し、金額や条件に見合った条項に修正し、納得できる契約が締結できました。

3-2 サロン経営会社(事業承継)

経営するサロン店舗について、知人の紹介者を通じて買い取り希望があったとのことでご相談。
希望の売買条件をヒアリングし、契約書案を作成して先方に提示したところ、先方は全く違う見解であり、すり合わせを試みるも悪条件のため交渉を決裂させるべきと判断。今回はご縁がなかったものとして売却は見送る結果となりましたが、当方から契約書案を提示することで相手方の意図が浮き彫りになって良かったと感謝されました。

3-3 システム会社(事業承継)

創業社長が株式売却によるM&Aを検討しているとのことでご相談。
M&A仲介会社を利用して売主を探すとのことで、提携仲介契約書のチェックから入りました。1社目は仲介手数料が高額かつ契約締結後の縛りがあまりに厳しいため、その旨をご指摘。今回は見送るとして、時間を空けて2社目のアドバイザリー契約書をチェック。2社目は概ね相場通りであり、比較的大らかな契約内容のため、若干の修正提案をした上でお話を進めていただくことにしました。
その後、買い手候補社が見つかりましたので、各契約書案及び最終合意書案のチェックを行いました。社長も納得できる形でM&Aが成立し、無事に株式を売却に至りました。

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