EC事業
1.EC事業者の皆様へ
EC事業(インターネットを利用した電子商取引)の市場規模は年々増加しており、令和5年の日本国内の消費者向けEC市場規模は24.8兆円(前年比9.23%増)に、企業間EC市場規模は465.2兆円(前年比10.7%増)とそれぞれ増加しています。また、商取引のEC化率は、消費者向けECが9.38%(前年比0.25増)、企業間ECで40.0%(前年比2.5増)とこちらも増加傾向にあり、商取引の電子化が進んでいます。 消費者向けEC事業内の市場規模割合としては、食品・生活用品等の物販系分野が約14.6兆円と多く、次いで旅行・飲食・理美容等のサービス系分野が約7.5兆円、電子書籍・コンテンツ配信等のデジタル系分野が2.6兆円と続いています(経済産業省令和5年度電子商取引に関する市場調査結果より)。 EC事業はあらゆる事業者が関与する可能性があり、またインターネット上で広く分析的に事業を行うことができるという優位性がありますが、他方、特定商取引法や個人情報保護法をはじめとした法令遵守、取引に沿った契約内容の確認等注意が必要な点があります。当事務所では、企業規模に関わらずEC事業者様のサポートに特に力を入れて行っておりますので、興味がある方は是非お気軽にご連絡ください。
2.EC事業者様のための顧問提供サービス
(1)EC事業における経営課題①:契約書チェック
EC事業といってもその事業内容は多岐にわたります。例えば、消費者向け物販系分野の場合、食品メーカーとの売買契約、生活日用雑貨の卸からの仕入販売契約、酒類や薬などの売買契約など取り扱う物販により契約内容が異なります。特に購入サイドの場合、販売サイドから契約書ひな形を提示されることが多いところですが、あるべき条項がない(例えば、物販系で所有権移転時期が定められていない、検収や契約不適合責任がない、解除条項や反社条項などの一般規定が落ちているなど)、条項があっても不適当な内容となっている(例えば、損害賠償規定が一方的に不利益になっている、手続き不明な譲渡担保条項が入っているなど)、実際の取引実態に沿っていない条項になっているなど、トラブル時に会社を守れない契約内容になっていることがあります。 また、サービス系分野やデジタル系分野のEC事業の場合には、物販系以上に取扱商品に沿った条項にする必要があります(特に決済方法、会員情報の取り扱い、アフターフォローサービスの提供方法には留意が必要です)。
(2)EC事業における経営課題②:プライバシーポリシー・規約作成
EC事業の場合、インターネット上の自社サイトに取扱商品やサービスを明示して取引を行うことになりますが、関係する法律は多岐にわたります。例えば以下のような法律関連します。
特定商取引法 | ECは通信販売に該当するため、送料等含め価格の表示、引渡時期、撤回解除に関する規定、事業者名等各種の表示が必要 |
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景品表示法 | うそや大げさな表示など消費者をだますような表示を禁止 |
個人情報保護法 | 個人情報取扱事業者に個人情報の取得保有ルール、利用目的、第三者提供の事前表示等を要求 |
資金決済法 | 前払式支払手段(電子マネー、ポイント、商品券等)、資金移動業(銀行以外が各地者間の資金移動の引受等)その他を規制 |
法の適用に関する通則法 | 越境ECの場合の準拠法に関連 |
電子契約法 | 消費者がミスで商品購入(クリック)をした場合などに関連 |
その他、取扱商品による各法律の規制を受けます。例えば、中古品を取り扱う場合は古物営業法、医薬品等を取り扱う場合は薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の適語湯があります。また、肥料を取り扱う場合は肥料法(肥料の品質の確保等に関する法律)による届出が、酒を販売する場合は酒税法等による通信販売種類小売業免許が必要となります。 このように、EC事業における各事業が法令に抵触していないかをチェックした上で、ネット上での契約決済を予定する場合には、不特定多数を対象とした契約規程=規約を作成し掲載して対応します。 また、個人情報保護法32条(及び政令10条)は、個人情報取扱事業者が保有する個人データについて、個人情報取扱事業者の氏名及び住所(法人は代表者の氏名)、利用目的、データの安全管理のために講じた措置、苦情申出先等を明らかにしておくことを義務付けています。そのため、多くの事業者では、当該義務を果たすために「プライバシーポリシー」としてサイトに掲載しているということになります。 当事務所では、顧問先企業の事業内容をヒアリングし、当該事業に沿った規約やプライバシーポリシー等を作成又はチェックしています。
(3)EC事業における経営課題③:債権回収
EC事業を行う上で、売掛金の滞納等は一定程度発生するところです。まずは滞納が発生しづらい対策を講じることや、保険適用等で対応することが考えられます。 しかし、上記対策では対応できない場合も当然あり得ますので、その場合には、顧問弁護士により債権回収を行います。事業者からの督促では反応がない場合でも、弁護士からの督促により支払ってくる場合も少なくありません。顧問先企業様の日常的な債権回収は顧問弁護士にお任せください。
(4)EC事業における経営課題④:カスハラ対策
EC事業の場合、ネット経由でのクレームは比較的容易に入れることが可能ではありますが、メール等による場合、クレーム対象者である従業員等と対面していないため、長時間直接的に拘束することは少なく、また、文字によるコミュニケーションの場合は、発語等による身体的コミュニケーション程度が高くないため、当該店舗のサイトのみで完結する場合であれば、深刻なカスハラには発展する可能性は高くはないと言えます。 しかし、EC事業の場合でも、実店舗への来店や、事務所への執拗な電話等によるカスハラがありうることや、ネット上での誹謗中傷等によるカスハラが生じやすい面もあります。 そのため、EC事業においてもカスハラ対策は必要であり、特にネット上の誹謗中傷が生じた場合の対策については、事前に用意しておく必要があります。
(5)EC事業における経営課題⑤:労務管理
人手不足の昨今、EC事業においてもますます労務管理の必要性が高まっています。特に中小企業においては、従業員一人が担う役割が大きく、特定の社員とのトラブルは企業全体に大きな影響を与えます。ECシステムの根幹に関わる従業員が退職する場合には、企業側の機密情報の管理・漏洩対策にも配慮する必要があります。
(6)EC事業における経営課題⑥:事業承継・M&A
EC事業者がさらなる事業拡大のために他社事業を譲り受けたり、逆にEC事業で得た顧客やノウハウ等の財産を売却する場面は、企業サイクルの中で生じうる場面です。現在は実店舗を有する企業でも多くがEC事業部門を有し、さらなる事業拡大のためM&Aを検討しているところです。また、企業が存続するためには経営者の交代は避けては通れませんので、事業承継のための各準備も必要となります。
(7)EC事業における経営課題⑦:廃業支援
EC事業会社が終了する場合としては、M&Aによる事業譲渡等もありますが、諸事情により現経営陣の元で事業停止し、廃業・清算に至る場合があります。また、債務超過又は支払い停止に至った場合には、やむなく破産手続をとらざるを得ない場合もあります。いずれの場合でも、従業員、取引先及び金融機関等への対応を迫られることになります。 当事務所では法的な破産手続きのみならず、任意の廃業支援も行っております。 具体的には、経営陣と一緒に親身になって廃業プロセスを相談・検討し、事業停止のタイミング、従業員への告知方法の検討、告知の際の同席、取引先への周知文章作成、金融機関への連絡及び同行など、事業者に寄り添った対応を行っています。また、場合によっては代理人として関係各所への連絡窓口となることで、事業者の負担を軽減することもできます。弁護士だからこそ、法的知識に裏付けられた全方位的な廃業支援を行うことができます。 なお、遠方の事業者様であっても、通常のご相談はZOOM等のウエブ会議を用いて行いますので、地域問わず全国対応が可能です。
3.当事務所の強み・費用
(1)当事務所の強み(特徴)
- 信頼関係を重視:代表弁護士自らが顧問先企業様を担当し責任を持って担当します。
- コミュニケーションを重視:相談しやすい、声をかけやすい関係を大切にします。お客様に合わせたツール(面談・電話・メール・ウェブ会議・SNS等)を利用しています。
- 依頼者の利益を重視:企業の法務サービスのみならず、離婚・相続・高齢者問題等プライベート問題にも対応可能。総合的なリーガルサービスを提供しています。
- 明確な料金体系:料金は事前にHPで公表し、個別お見積りも事前にご提示します。顧問料のお支払いは口座振替(手数料は当事務所負担)が可能です。
(2)弁護士費用
4.EC事業者様の活用例
利用規約、プライバシーポリシー策定
既存コア事業とは別に新規事業としてECサイト立ち上げに伴う利用規約とプライバシーポリシーの策定ご依頼。 新規事業内容をヒアリングし、利用規約とプライバシーポリシーを策定。特定商取引法上求められる表示も一緒に作成しました。
※新規事業の内容をヒアリングする段階では、新規事業が関係法令に適合しているかのリーガルチェックを行いました。今回は当該事業がリーガル的に問題はないと判断しましたので、実際の事業スキームに沿った利用規約、プライバシーポリシー、特定商取引法上の表示を策定しました。利用規約については、原案作成後何度かやり取りをして微調整し、プライバシーポリシーについては第三者提供の部分について重点的にヒアリングした上で策定しました。
契約書チェック
仕入先から提示された契約書をそのまま使っていたところ、取引先が増えてきたこともあり、当事務所にチェックをご依頼。現行法にはない規定や、実際の取引とは異なる内容の条項も多く、依頼者に一方的に不利な内容の条項も見られましたので、下請法や公平の観点から修正提案を申し入れ、実態に沿った適正な契約内容にしました。 現在も新規契約はすべてリーガルチェックを行い、また過去の契約も適宜見直しを図っています。
廃業支援
①EC事業も営む卸小売業会社から、売上減少に伴う廃業のご相談。
亡父に代わって家業を引き継ぐも、コロナ禍の影響で売上が激減。立て直し困難のため、なるべく従業員や取引先へ迷惑をかけないように廃業したいとのこと。まずは月次収支、売掛買掛、取引先、在庫、従業員、売却予定不動産、借入金融機関等を確認し、相談の上で事業停止する日を決定。事業停止予定日までに準備を行い、全社員に対する解雇予告通知への立ち合いをし、従業員に経緯を説明。ECサイトについては通知日に新規取引を停止。その後も担保不動産売却のサポート、在庫引取り・処分などを支援し、最終的には残債務をすべて返済して清算し終了しました。
②革小物等の販売会社から、資金繰りが厳しいため廃業を検討しているとのご相談。
税金の滞納はないものの、大幅な債務超過であり、既に任意の廃業は困難な状況となっていたことから、法的手続(破産手続)を選択。社長も金融機関からの融資の連帯保証人になっていることから、会社と社長と同時破産申立てをすることに決定。 間近に迫った支払い期日に対応すべく、弁護士から関係各所に直ちに受任通知を送り、ECサイトについても新規受注を停止。破産申立てのための予納金が不足していたため、在庫を一部処分して資金作りを開始し、申立て費用ができたところで破産申立てをし、混乱なく管財人に引き継ぎました。
労務問題
ある社員の勤務態度不良により、会社側から解雇したいとのご相談。
就業規則上、懲戒事由となる事項が散見されるものの、これまで特段懲戒処分をしていなかった上、解雇事由までは認めがたいため、まずは懲戒規定に基づく譴責・戒告などイエローカードを出し実績を積むことに。その上でさらに重い処分を出す中で、退職勧奨を行い、従業員も納得の上で自主退職に至りました。