任意後見人の依頼は慎重に!

高齢等により判断能力が落ちて財産管理ができなくなってしまった場合,成年後見制度の利用が考えられます。
 
  ただ,成年後見人は裁判所が決めますので,必ずしも自分が望む人に後見人になってもらえるとは限りません。
 
 そこで便利なのが,任意後見契約です。元気なときに任意後見契約をしておけば,
 
依頼した任意後見受任者が必ず任意後見人になってくれますので安心ですね。
 
  が,実は見落としがちな落とし穴があります・・・ 
 
 
 
  任意後見契約は,元気な頃に自分が好きな委任事項を決めて,自分の好きな候補者を決めて契約しておける,とても便利な制度と言えます。
 
  ただ,契約後に事情が変わり,他の候補者に変えたい,となることもありますよね。
 
  その場合でも,任意後見契約を解除すれば大丈夫です。
 
  すなわち,
 
①任意後見監督人が選任される前であればいつでも
 
②選任された後は,家庭裁判所の許可を得れば解除可能です(任意後見契約に関する法律第9条より)。
 
 
  しかし,実は①には大きな問題があります。
 
  受任者と円満な関係が築けていて,いつでも連絡がとれるという状態であれば大丈夫ですが,「他の人にしたい」と考える状況の場合は,大概受任者と仲違いしていたり,音信不通になっていたりすることが少なくありません。
 
  そうすると,思った以上にやっかいな状況に陥ります。
 
 
 
  すなわち,法律上は「公証人の認証を受けた書面によって」解除することになるのですが,この「公証人の認証」と「書面」が問題です。
 
  ここで言う「書面」は,Ⅰ)本人と受任者双方連名の解除書面か,またはⅡ)本人(又は受任者)からの一方的な解除通知のことを指します。
  Ⅰ)の場合には,本人と受任者が揃って,公証役場に出向き,その場で「認証」を受ける必要がありますが,まず受任者が協力してくれず,公証役場まで出てきてくれない可能性があります。
 
 そうすると,Ⅰ)の方法は採れませんので,Ⅱ)の一方的な解除通知をすることになります。
 
 しかし,Ⅱ)の場合でも,
 
・まずは本人が公証役場に行き,解除通知書案に認証をもらう手続をする(代理人は不可です。必ずご本人が直接認証を受ける必要があります)
 
・認証を得た後,内容証明郵便で受任者に解除通知書を郵送しますが,受任者がどこに住んでいるかわからないと郵送できません。
 
・仮に住んでいる場所がわかっても,受任者が受け取らない場合には,解除通知が到達したことになりません(少なくとも法務局が受け付けてくれません)。
 
 
  ということで,受任者が意地悪をして解除通知書を受け取ってくれないと,解除ができず,万が一そのまま任意後見契約が発動してしまうと,自分の望んでいない受任者が任意後見人となってしまいます。
(解除するためには,最終的には裁判所で別途法的手続をとる必要が生じる可能性が高いでしょう)
 
 
 
  任意後見契約は,自分の意思を反映させることができるのでとても便利な制度ではありますが,適当に受任者を決めてしまうと,後で受任者を変えたくなったときに非常に苦労します。
受任者を誰にするかは,よくよく慎重になって検討していただきたいと思います。